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ケアの倫理

 著者: 森村修  ジャンル: 現代哲学, 社会批評  出版社: 株式会社 大修館書店  ISBN: 978-4469264418  ページ数: 237
 感想:

ケアの倫理, 森村修(著), 株式会社 大修館書店, 2000. (Amazonリンク)

筆者の個人的体験や、一般の人々が人生の中で直面した/するであろう経験を基に、ケアの倫理というものが何なのかを論じる本でした。

ケアと聞くとどうしても他人を思いやる自己犠牲の精神のように聞こえますが、
それ以前に自分自身へのケアが必要であり、そのうえで他人に対しても同様の思いを寄せることが重要であることが主張されていました。

ケアの倫理を前面に出す主張をされたときに何となく感じる違和感はそこにあるのかと納得しました。

また、この本はペットや親族や両親の死に伴う虚無感、
介護や医療への従事によって他者への気遣いに疲れ果てることによる燃え尽き症候群にも触れられています。
個人的には、たまたまここ最近読んだ本に共通の話題だったので、驚きました。

さらに、欧米で言われている男性の正義の倫理と、女性のケアの倫理という分類を我々日本人が聞いてもピンときませんが、
これは日本人は男性女性にかかわらず欧米よりはケアの倫理を内部に有しているからなのではないかという記述がありました。

過去に読んだ本の中でも日本人の相互依存的関係性と欧米人の相互独立的関係性とおいうものに触れた本があり、
それらで得た知見を踏まえても納得のいく主張だと感じました。

もちろん、だからと言って日本においてはケアの倫理はどうでもいいとか、
社会において男性と女性がそれぞれ置かれている状況を学術的に分析、考察しなくてよいというわけではないので、
ケアの倫理を学ぶ意義は十二分にあると言えます。

ケアの倫理を我々の基礎的な日常感覚から解き明かしてくれる良い本でした。

Matephysi評価
★★★☆☆

2024年10月9日


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