若き数学者のアメリカ, 藤原正彦(著), 株式会社 新潮社, 1981. (Amazonリンク)
卒業後にアメリカでポスドク、助教授になられた藤原先生のエッセイ。
藤原先生はやはり文章が上手く、読むと必ず元気がもらえます。
というのも、藤原先生は悩みや葛藤、虚栄心や自信をありのまま表現してくださるので、自分自身の状況と重ねやすいからです。
また、後半にアメリカやアメリカ人について回想する部分は勉強になりました。
理想を求めてがむしゃらに生きていた50年代。
理不尽に抵抗するも無惨に破れてしまった60年代。
そして、何事にも希望や理想を見出すことができずに身の回りの最低限の欲望だけを満たそうと懸命に生きるそれ以降の世代。
移民からなり故郷を持たず、孤独と常に戦うアメリカ人。
しかしながら、人間的感受性は国や文化を問わず日本人と同じアメリカ人。
世界各地で紛争が過激化し、閉鎖的な世界になりつつある現代でも勉強になる地検が得られました。
単純に日本人数学者の学術的旅行記としても、
あるいは日本人によるアメリカ文化のフィールドワークとしても楽しめる、
ともておもしろい本でした。
僕の好きな「遥かなるケンブリッジ」と共に藤原先生の代表的著作のひとつなので
興味のある方はぜひ読んでみてください!
Matephysi評価
★★★☆☆
2024年10月6日