金閣を焼かねばならぬ 林養賢と三島由紀夫

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金閣を焼かねばならぬ 林養賢と三島由紀夫

 著者: 内海健  ジャンル: 小説, 社会批評, 精神分析・発達障害関係, 近代哲学  出版社: 株式会社 河出書房新社  ISBN: 978-4309254135  ページ数: 228
 感想:

金閣を焼かねばならぬ 林養賢と三島由紀夫, 内海健(著), 株式会社 河出書房新社, 2020. (Amazonリンク)

日本を代表する建造物である金閣寺(北山鹿苑寺)
なんとそこに放火した一人の青年がいた。

我々はそんな世紀の一大事件を起こした犯人の動機が気になって仕方がないが、
当の本人は動機をはぐらかすような返答しかしなかった。

動機は検察によって語られたものの、本書で内海先生は、
本人が真実が分からないと言っているのだから、そのような動機は創作でしかない
と指摘しています。
そして、内海先生自身は本書において、動機は後から造られるものであって分からないものだという態度を取ります。

そのような態度で放火犯の修行僧、林養賢のおかれた状況から精神状況を分析し、
放火という行為に至らざるを得なかった内面の葛藤を鋭く分析している本です。

また、動機があやふやな放火事件を取り上げ調査し、小説という形にした三島由紀夫も取り上げ、
その小説を構成するに至った彼の内部の精神的ダイナミクスを分析しています。

何かと物騒な事件や不謹慎な出来事が起こり続ける現代社会において、
ついつい真相や動機を求め、それらを理解することで安心したくなる我々ですが、
そのような態度を見つめなおすきっかけになり、それに必要な知識を思う存分与えてくれる本です。

精神医学や哲学が好きな私にとっては非常に刺さる本でした。

Matephysi評価
★★★☆☆

2024年12月6日


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